明科を代表する道祖神といえばなんといっても潮沢の奥の池桜の接吻道祖神。
実物を見たことが無いという人も竜門淵にあるレプリカをご覧になった方は多いでしょう。
他にも抱擁道祖神とか頬を寄せ合っているとか、色っぽくも微笑ましいのが明科の道祖神の特徴です。
全体的に生真面目な道祖神が多い安曇平のなかで際立っています。これは江戸時代に潮沢は煙草の産地として栄えたことと無縁ではないような気がします。
ある種豊かさが生んだ洒落っ気とでも言いましょうか。
明賀に向かう林道の途中に半分土砂に埋もれた道祖神があります。
会のウオーキングイベントの折に昔の記憶をたどってわざわざ掘り起こしていただいたのですが、そこには清水村と彫られています。
昔の人が清水から盗んで(嫁入り?)きたと伝わっているとか。きっと御利益のある道祖神さまだったのでしょう。
町区の公民館前にある大国主命と稲田姫の道祖神は帯代百両と彫られています。
百円出せば嫁入りさせてやるということなのでしょうが、盗難予防ということでしょう。万延元年の造立でお二人とも端正な顔立ちをしています。
同じく大国主命と稲田姫と思われるのが明治6年造立の中耕地押出の道祖神。町区の道祖神がポッチャリ系ならこちらはメタボ系。
いずれも美男美女のカップルで微笑ましいお姿で佇んでいます。帯代は百円です。
庶民にとって道祖神は最も身近な神様でした。それだけに、御利益が有っても無くても、道祖神は色々と被害を被ったようです。
御利益があるありがたい道祖神は盗まれ、御利益のないものは役立たずと壊されたり、
もう一度神徳を取り戻せとばかりに火をかけられたりもしたようです。
柏尾の抱擁道祖神の女神の首が修復されていることが気になります。何かの拍子に首が取れてしまったのか、それとも役立たずとして故意に壊されたのか。
しかし、きちんと修復されているところをみると事故だったに相違なく、地域の人たちの暖かい思いが伝わってくるようです。
安曇野には戦前に作られた道祖神だけでおよそ580体あると言われており、
その内明科には146体あるとされています。一体一体それぞれに地域の人の思いや願いががこもっています。大事に守り伝えていきたいものです。