安曇野風来亭 道楽日誌 操業日誌 戦国山城散歩 キノコ図鑑 小平漁協書籍部 自己紹介

小平漁協の通勤娯楽

1999.11.10

海外の釣り本にも関心は抱いているのですが、私の書架には僅かの本しか並んでいません。 こればっかりはタイトルや作家名からあてずっぽうに推理探索するだけでは発見できないので、 紹介してもらうか図書目録等のお世話になるしかありません。どなたか、ご存知の本があれば是非ともご紹介頂きたいものです。


「オールド・ソルジャー」 ヴァンス・ボアジェリー 新潮文庫 1996年2月1日

 20数年間の軍隊生活の後、除隊してガソリンスタンドを経営する兄と、ミュージシャンででゲイの弟のスコットランド系 アメリカ人の堅い絆の物語。
 60歳の誕生日に5年前に軽はずみに結婚した妻からの離婚請求を受けた兄 のジョーは解放感と複雑な思いを抱いてニューヨークの弟に会いに行く。ミュージシャンとして成功している弟の トミーはエイズ発病の不安に苛まれながらも熱狂的なライブを続けている。兄は弟をメイン州の渓流釣りに誘う。

 兄はピックアップにキャンピングトレーラーを引いて一足先にメイン州の渓流沿いでキャンピングフィッシングを 楽しみながら弟を待つことにする。しかし何かと騒々しく馴れ馴れしいキャンパーたちに干渉されてのキャンプになってしまう。 それでも川にカヌーを浮かべてフライでサーモンを狙う時は爽快な充足感に満たされるのだった。
 一方、 弟はバイクを駆って待ち合わせ場所に向かう。途中別れて暮らす一人息子の通う学校を訪れて精魂こめて演奏するが、 病が次第に身体を蝕みはじめていることに気がつく。楽しみにしていたバグパイプのコンクールに参加することも断念し、 ミュージシャンとしての生活に区切りをつけるべき時がきたことを知るのだった。
  疲労困憊してキャンプサイトに到着した弟は兄にエイズに罹ったことを告白する。優しく受け容れる兄。 しかしその話を若者のキャンパーが盗み聞きしていた。しかも感染したと思いこんだその若者はパニックに陥り、 弟の足をライフルで撃ち抜いてしまったのだ。なおも執拗に攻撃してくる若者と兄が争っている隙に、 エイズに冒されていく自分の姿を兄と息子にさらしていかねばならない恐怖から自ら川の流れに身を投じてしまう。

 物語のハイライトは兄のフライ・フィッシングシーンと弟の演奏シーン、カヌーでの激流下りと活劇シーン。穏やかに時に激しく、 そして底流にながれるバグパイプの響き。移民、インディアン、ベトナム戦争、音楽、ゲイ、エイズ、バスケットボール、 キャンピング&フィッシング、暴力、等々、アメリカ的な世界がここに凝縮されている。
 映画化されたノーマ・マクリーンの「マクリーンの川」(集英社)にも比肩すべき作品と言ってもよいかも。

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