自宅を出るときの目的地は櫛形山だった。ところが途中のパーキングエリアから富士山が意外にすっきりと見えるので目的地を変更、かねて気になっていた富士展望の山・釈迦ヶ岳にすることにした。
芦川村に入り、登山口のドンベイ峠に向かって車を走らせて行くと、林間に臨時駐車場が設置されていてなにやらお祭りの雰囲気。「芦川すずらんの里祭り」の会場だった。ちょうど腹も減ってきたことだし、何か地元の旨いものでも食べてみようと覗いてみることにする。
林の中に群生するすすずらん、しかし花はまだまだ三分咲きというところか、観光バスで訪れた人々もややがっかり風。すずらんの青葉の中にポツンとピンクのイカリソウ。
テント村でイノシシ汁と古代米で作ったという黒うどんに舌鼓を打つ。観光案内所でハイキングマップをもらい、芦川村が実はかって登ったことがある御坂黒岳に源を発する芦川沿いに広がる村だと知った。河口湖側からばかり見ていたが芦川村から見ると御坂黒岳は懐の深い御坂山塊の盟主といった趣だ。
ドンベイ峠からは低木の自然林の中の細い尾根道をたんたんと歩く。何回かアップダウンを繰り返すと1時間足らずであっけなく山頂。
山頂でまず探したのが有名な夫婦地蔵。居た居た、富士山をバックに夫婦地蔵が鎮座、やや不似合いなガウンを着させられて迷惑そう?山頂はまさに360度の展望、富士山の手前には黒岳、節刀ヶ岳などの御坂山塊、三つ峠のアンテナ群も見える。ややガスってはいるが、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山、そして北岳、間ノ岳、農鳥岳など南アルプスの山々、また八ヶ岳とその手前に茅ヶ岳、さらに目を転じれば大菩薩嶺、國師ヶ岳、甲武信ヶ岳、金峰山、瑞牆山など、かって登った山々が連なっている。さ〜て、今年は何処に登ろうか?などと思いを巡らせる満ち足りた瞬間だ。
ドンベイ峠に戻り山頂から見えた新道峠に続く林道を詰めて見ることにした。かって河口湖側の中沢林道から黒岳に登った折りに通過したのが新道峠。日が暮れはじめ所々凍結した山道に四苦八苦した思い出が甦る。ところが林道の終点から5分も歩くとその新道峠。まったく拍子抜けしてしまう、汗水流して登り詰めた峠のすぐ側まで車道が来ていたなんて。峠からは富士山と麓に広がる河口湖や街がパノラマのように一望。楽して眺めるか、それとも苦労して眺めるか、そんなことと関係なく、夕景色を狙うのか次々と三脚を担いだカメラマンがやってくる。
写真を撮りにもう一度釈迦ヶ岳とここに来てもいいなと思った。