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小平漁協のフォト日誌

ベタナギの夜に<真鶴〜湯河原>

 先週は沢登りまがいの渓流釣でフィトンチッドに心と身体を浸らせたのに今週は、金かかる・汚い・臭いの3K、海釣りに身をやつす。われながら何とあきれはてた浮気症、ノンコンセプト、優柔不断、いやファジー。いったいどちらが私の求めている釣りか?いまさら迷い悩む必要もないけれどただただ釣れれば何でもいいや、という無邪気さはもう持てず、しかめっつらして「う〜ん、釣りとは〜」などと講釈のひとつも垂れねば、「あそこのダンナさんはねえ・・」などと後指しているかもしれないご近所さんや、飲めば麻雀、ゴルフの話題しかない同僚たちに申し訳が立たない、という訳では全くないが、今日も暗いうちから起きだして犬に吠えられてご出立。
 まずは真鶴道路下のナガネ。ここ2年ほど何回か釣行を繰り返してきた磯。カイホに渡れないときの代替場所としていろいろ試みてきたが、30センチクラスのメジナを何回かあげただけでクロダイの顔は未だ見ず。なぜかタカノハダイだけはよく釣れて、今回も元気よく磯端を走り回ってくれた。  
潮止まりとともにコッパメジナのアタリもなくなって、湯河原に移動。護岸のテトラポットに乗っての不安定な釣りだが、なぜか以前から気になってきた。気になるというのは、クロダイが口を開けて待っている予感がする、という意味。それも、朝ではなく夕まずめから夜にかけてが気配濃厚、期待大。夕マズメまではだるい潮の流れと餌盗りに悩まされ続けるが、ときおりコッパメジナが眠気を醒ましてくれる。

 暗い波間に浮かぶケミホタルの光をボンヤリ見つめながら、「こんなこと初めてからもう随分になるなあ」と、ふと思う。そういえば、初めてクロダイを狙ったのもテトラの上からだった。 新潟にいた頃は歩いて行けるほど海が近かったから、朝は出勤前にキス釣り、夜はスズキ、クロダイ狙いによく出掛けたものだ。
もう10年以上も前のことになるのかなあ。海が近いからか、釣行前にじっくり計画を練るとか、釣友と相談するなんてことはまったくなく、ほとんど単独行だった。だからその時のクロダイ仕掛けはというと全くの自己流で、いま考えると恥ずかしい限り、浮子などは深さに関係なく固定式だった。当然のことながらほとんど見るべき釣果はなかった。
そんな私が釣りにのめり込んだのは東京本社に転勤してきてからだ。初めて遊動式の仕掛けと立ち浮子、そしてコマセの打ち方を教えてくれたのは同期入社のMだった。彼はカイホをホームグランドにして年に100枚近くのクロダイを釣りまくっていた。同じ磯に乗っていながら、私はボーズ、彼は5枚、なんてことはしょっちゅう。2〜3年はタモマンに甘んじていた。そのうち仲間と伊豆だ房総だとヒラマサやヒラスズキを追い掛けまわすようになり、私にもチャンスが回ってきて、彼のタモに納まった大物も何本か。
 その後、会社の釣り仲間は脱サラしたり、転職したりで一人減り、二人減り、Mも一昨年会社を辞めて、当分釣りどころではなさそうだ。残ったのは目下ゴルフに夢中のと、隣で竿を出してるTさんだけ。新潟の海は潮の干満の差が少なくほとんど潮が動かなった。今日は中潮だというのに、ここ湯河原の海もトロトロとまるで新潟だ。風もなくほとんどベタナギ、正面に赤い月が昇りはじめて納竿。
 この場所にはもう来ることはないだろうな、と、ふと思った。

1991年6月29日(土)真鶴有料道路下〜湯河原
 日  時:91/06/29 7:00−21:00 (中潮) 
 場  所:神奈川県真鶴有料道路下〜湯河原 湯河原高校裏
 天  候:くもり ベタナギ 
 釣  果:コッパメジナ タカノハダイ ボラ 

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