この山に限ったことではないが長野の里山は案内標識が不十分だと思う。
近くまで行きながら登山口を発見できずに断念したことが何度かある。
今回もとりあえず尼厳山と奇妙山の鞍部付近を目指して車を走らせて石仏がある駐車スペースに車を置いた。、
林道を暫く歩いてから「信州山学会」が取り付けた標識を見るまではそこが登山口かどうか半信半疑だったので安堵した。
カラスの鳴き声に空を見上げると尼厳山(あまかざりやま)上空でカラスがトビを執拗に追い立てていた。
登山口から鞍部までは暗い杉林の比較的急な道を登る。暫くぶりの山歩きで心なしか身体が重い。
白いオドリコソウばかりが目立つ道端で漸く赤いイカリソウを一株見つける。
尼厳山への分岐から右の尾根道を進む。杉林を抜け出る頃から新緑の樹林の間にヤマツツジが美しい。
振り返れば尼厳山が見事な三角形の姿を見せ、
海津城址のある松代の町の向こうに上杉謙信が陣取った妻女山が半島のように見える。
謙信軍が粛々と渡った千曲川のうねりも見渡せ、川中島の戦の舞台を一望。
尼厳山も上杉方の山城の遺構が残されているという。
軽装の年輩の人が軽々とした足取りで我々を追い越していった。今日出会った唯一の登山者。
北アルプス全山を展望できるという岩場の上で小休止。残念ながら春霞で展望は得られなかった。
アルプス展望台からはチゴユリの小さな花を愛でながら登る。
折り返してきた年輩者と再び挨拶を交わし、
「ガンバレ!」とか「頂上目前」とか書かれたプレートに励まされてさらに30分、
蚕養神と彫られた石碑に迎えられて山頂に到達。
「奇妙山」の名前の由来はネットで調べた限りでは不明。
近くの皆神山ピラミッド説とか、
松代群発地震の折の発光現象などと関係あるのではと考えるのは山頂での妄想か?
因みに尼厳山は手力男命が天の岩戸を開けた際、
天照大神に再び閉じ篭られないように岩戸を隠してしまおうと、
隠し場所を探してた時にひと休みした場所であるといわれ、
天の岩戸を隠したのが戸隠山といわれているとか。
そんな伝説に惹かれた訳でもないのだろうが、帰り道で迷子になってしまった。
この道は初めて通る道かもと怪しみながらも、迷うような地点はなかったはずだと考え考え進んだ。
しかし暗く不気味に屹立する尼厳山直下まで到達してやっと道に迷ったことに気がついた。
一気に疲労感が増し、何故ミスを犯したのか分からず首を傾げながら後戻りする。
岩場のピークを登り返して下ると見覚えのある鞍部、奇妙山との分岐点に達した。ここが降下点だ。
ミスの原因はすぐに判明した。
登るときには目立つ場所にあったから、あるとばかり思い込んでいた分岐点の標識が下り時には目に入らなかったのだ。
自分の不注意には違いないが、標識の掲出場所が全く不親切なのだ。