先週末に訪れた妙高高原で雪道に遭遇して峠越えを断念したこともあって早速スタットレスに履き替えた。
北信の山々もほぼ紅葉が終わって褐色にくすみ始めてきた。
信越国境付近の山々は冠雪しているから林道は既に普通かもしれない。
長野近辺の山々もあと二〜三週で登山口に到達することさえ困難になるだろう。
だとすれば年内に登れるのはあと一山か二山。
ということで選んだのが鬼無里の一夜山。
山名は天武天皇の鬼無里への遷都計画を妨害するするために鬼が一夜にして作ったという伝説に由来するとか。
西越開拓地から戸隠連山の雄・西岳の絶壁を右手に見上げながら林道を進む。途中で引き返してきた群馬ナンバーの四駆に出会う。どうやらもっと奥まで車で進入できるようだ。案の定、20分ほども退屈な林道歩きの果てのドン詰まりに車20台以上駐車できそうな空き地があった。この空き地からさらに奥に向かって林道が続いているが道路脇には「一夜山を愛する会」による進入禁止の看板が遠慮がちに建っている。鎖も張られていたようだが錆付いて切断されたままだ。タイヤ痕が奥まで続いている。
空地から見上げる一夜山は凄惨な容貌をしている。かって奥裾花ダム建設のために岩石を採掘していたということで人工的な断崖絶壁となっている。石灰岩採掘のために山の半分を削り取られた秩父の武甲山を思い起こす。一夜にして山を作った鬼よりも巨大な力で自然を破壊した現代の鬼を思った。
林道と思われた道はどうやら採石のための道路だったらしく二度三度と折り返しながら高度を増していく。四駆ならまだまだ登れそうだが、先ほどの群馬ナンバーは雪道になったところで諦めてユーターンしていったらしい。
良く整備された車道はまだまだ上に向かっている、もしかしたら頂上直下まで四駆なら行けるのかもしれない。そう考えると、急に興醒めして疲労感が増した。
尾根筋に到達して漸く道幅が狭まり車道の雰囲気はなくなったが、整地された道はかえって歩きにくいものだ。振り返ると西岳が大きく聳え立っている。
広々とした山頂には誰もいなかった。晴れていれば360度の大展望をほしいままにできるはずだが、今回も残念ながら薄曇り。未練がましく繰り返し山座盤を眺め、祠に手を合わせて帰ってきました。