昨年の今頃は病院のベッドの上だった。退院できたら病院の窓から見える山々に片っ端から登ってやろう、まずは四阿山、次は飯縄山そして北アルプスなどと夢想していた。しかし3ヶ月近くの闘病生活でどの程度体力が衰えたものやら見当もつかず、騙し騙しリハビリトレッキングを重ねてきた。
緩やかだがアプローチの長い四阿山、自宅からは近いが急峻そうな飯縄山など、まだちょいと無理な気がして二の足を踏んでいる。
そんな折、一月前に訪れた八方池から眺めた北アルプスの山々。その一角をなす唐松岳が意外と登りやすそうなことを知る。八方池までは難なく行けたので後3時間ほども頑張れば山小屋。本来なら五竜岳を廻って遠見に降りるコースをだが八方尾根をピストンの一泊二日ならば楽々コース。
一ヶ月ぶりに訪れた八方尾根の花々は秋の彩りに代わっていた。ニッコウキスゲやオオバギボウシは姿を消し、シモツケソウやハクサンシャジン、ウメバチソウ、カライトソウなどが咲き乱れていた。
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前回は八方池に雄々しい姿を映しこんでいた白馬連山はガスに包まれて全く見えず、おまけに扇の雪渓付近を過ぎる頃には雨がポツリポツリと降ってきた。それでも本降りという雰囲気ではなく、時折はガスが晴れて付近の谷間が明るく開けるので、とりあえず丸山ケルンまで登ってみることにした。
こんな時に頼りになるのが腕に巻いた高度計だ。多少の誤差はあるようだが刻々と高度を稼いでいる様子が見えて励みにもなるし嬉しくもある。
そんなこんなで、カミさんの心配をよそにとうとう頂上山荘まで到達してしまった。崖の道を曲がったら不意に現れた小屋が妙に頼もしかった。
翌朝、御来光を仰がんものと朝食前に山頂に向かう。雲海の彼方から昇る朝日。とりあえず来年の年賀状の写真が決まった。ん?ワンパターン!?
朝日に向かって右側に鎮座しているのが五竜岳、左側には不帰ノ剣を経て白馬三山の峰々。稜線上には既に次のピークに向かう登山者の列が見える。悔しがる妻。
いつか必ず連れって行ってあげるからと約束して山頂で記念写真。立山連峰に落とす唐松岳の二等辺三角形の形が美しい。八方池からは観光客の列に混じってダラダラと下山する。
ダイモンジソウ・ウメバチソウ・
ミヤマコゴメグサ・ウサギギク・
タテヤマリンドウ
カライトソウ・タカネセンブリ・イワツメクサ・
シモツケソウ・ハクサンシャジン