吾妻川支流の温川源流部。学生時代からの友人に初めて渓流釣りの手ほどきを受けた渓だ。その時は餌釣りだったが、今回は自分で巻きためたフライと新調したロッドとリールで挑戦。これを機会に餌釣りに決別してフライに完全転向しようというのが秘かな決意。
久々の釣友との釣行、前夜のうちに渓流沿いの林道に到着。満天の星空の下、焚き火を囲んで時を忘れて飲み交わすうちに、夜は白々と明けてきた。意欲満々の釣友は一睡もせぬまま渓に降りてゆく。
釣友は餌釣り、私はフライだ、慌てることはない、本番は夕まずめだ。旨い酒にダウンした私は車に潜り込んで仮眠。
2時間ほどもウトウトしただろうか、車の走りすぎる音で眼を覚ます。いつのまにか林道の遮断機が開けられて何台かの車が上流部を目指して登って行ったようだ。ゲート脇にも2台の車。やはりGWのまっただ中、いずこの渓も釣り人で溢れている。だが不思議と先陣争いをする気持ちはない。身支度を整えて沢筋の道を降る。
餌釣りとフライ。ロッドを握って魚と向き合う心持ちの違いを感じる。流れに浮かぶフライに絶えず意識を集中し想像をたくましくする。いまにも魚が躍り出てフライを加えるはずだ。漫然とした時間が一瞬たりともない。侮恨や妄想など雑念が入り込む余地がない。ひたすらフライを正確にポイントに飛ばすことに専念する。心技一体とでも言うのか、狙い通りのポイントに飛ぶと陶酔感さえ覚える。もはやフライの下に魚は不要だ!?
とかなんとか、やっぱりウダウダと考えている自分に気がついた頃、ようやく魚の影。しかし合わせ切れ。その後も忘れた頃にチビイワナがじゃれてくるがフッキングに至らず。下ってきた二人の餌釣り師に出会ったので午前の部を納竿。彼らもほとんどアタリがないことをぼやいていた。コゴミを少々収穫してからキャンプサイトに戻ると既に釣友は戻っていて、流石は師匠!魚籠の中には23センチを頭にイワナが3尾。
しばしの午睡の後、再び深い渓に降り立つ。だがしかし、なんということだ、餌釣り師が去った夕方の渓に今度はカップルのフライフィッシャーがジャブジャブと流れの中を釣り遡っているではないか。ああ、万事窮す!
キャンプサイトに戻って焚き火の準備をするうち釣友が戻ってきた。沢筋に潜り込んだ釣友にはイワナが2尾。今宵はイワナで乾杯。フライだったらこうはいかない。こんな時は餌釣り万歳!というところか?
翌朝は大石沢を釣りながら降る。今日こそはイワナの顔を拝みたいと竿を持ち替えての挑戦。なんという無節操、軟弱、ノンコンセプト、浮気性!どんな罵詈雑言を浴びてもいい、魚体をこの眼で眺めてカメラに納めたい!本流出合いまで小一時間、心憎いばかりの渓相だがアタリはピクともなし。岸辺の岩にベタベタと濡れた足跡が点々と続くのを発見して早々とギブアップ。ヤマドリの尾羽2本が唯一の収穫。
よ〜し、この羽でフライを巻いて再挑戦だ!餌用の竿は捨てることにしよう!ってか?いつになったら餌釣りと決別できるのか、嗚呼自己嫌悪!
釣友は枝沢でイワナ2尾追加。2泊2日のキャンプ&フィッシング、釣果はなくとも十分に堪能。新しいロッドに確かな手応えも感じた。今度は温川を遡り詰めて、ついでに浅間隠山に登ろう(^−^;