まとまった休暇が取れないので念願の剣岳を諦めて鳳凰山に目的地変更。青木鉱泉から中道を薬師岳まで登って山小屋泊、翌朝、観音岳、地蔵岳を経てドンドコ沢を降って青木鉱泉に戻るコースを選択。
<8月16日>
登山口の青木鉱泉に車を置いて歩き始めたのは午前8時。明日の天気予報は曇り時々晴れ、
山頂からの展望は望めなくてもタカネビランジさえ見られればと、鉱泉の対岸に渡り林道を詰め、
長丁場の登山道にとりつく。ひたすらの登りそして登り、御座石に着いたのは既に午後1時半。
ここまでで5時間半、標準タイムは3時間50分だから1時間半もオーバータイム。
ドリンクも既に2本を空にした。このコースは一般的ではないのか、この間、我々夫婦を追い越していったのは一組、
降りてきたのは二組だけ。
御座石からはシラビソの天然樹林の中をさらにきついアルバイトを強いられ、薬師岳山頂(2780m)にたどりついたのは3時半。
霧が立ちこめて展望は得られないが、あちこちの岩陰にはピンク色のタカネビランジ、そして緑色のトウヤクリンドウ。
チングルマの毛が霧に濡れていた。
薬師小屋前はすでに登山客が思い思いにくつろいでいた。ホシガラスが人を恐れることもなく木の実をついばんでいる。
夕食はおでんと漬け物。100人定員のところ60名程度で、布団一枚にゆったりと一人で寝られた。
しかし天井の低さと狭苦しさは否めず、夜半の雨音も気になってなかなか熟睡できなかった。
<8月17日>
翌朝は生憎の霧雨。これでは御来光も望むべくもないが、身支度を整えてとりあえず出発。
霧に包まれた薬師岳山頂で記念写真。雨は止んだものの霧で何も見えない。
砂礫の尾根道を観音岳を目指して歩き始める。そこかしこに顔を見せるタカネビランジが嬉しい。
一時間足らずで観音岳山頂。
薬師岳方面を振り返るとちょうど霧が薄れて富士山が浮き出てきた。雲海の向こうに丹沢や奥多摩、八ヶ岳も浮かんでいる。
ここでしばらくティータイム。出足の遅い登山者達も続々と追いついてきて、いつしか山頂は大賑わい。
そのうちに歓声が上がって北岳が背後の雲の間から偉容を顕わした。甲斐駒ヶ岳も雲に巻かれてその峻険な姿を見せている。
地蔵岳のオベリスクもポツンと雲間にある。ここで一時間以上の大休止、いつしか周囲の山々は再び乳白色の雲の中に消えた。
観音岳から霧と砂礫の尾根道を歩く。鳳凰三山でしか見られないホウオウシャジンを幾株か発見。
盛期は過ぎたようだがタカネビランジはあちこちに咲き誇っている。色合いも白から淡いピンク、濃いピンクまで様々、
その度にデジカメを向ける。アカヌケ沢ノ頭を経由して賽の河原へ。
沢山の石地蔵が祀られている賽の河原に荷物を置いて地蔵岳(2764m)のオベリスクに挑戦。
もちろん登頂すべくもなく、先端の岩の根元にタッチして秘かに満足。
地蔵岳からは鳳凰小屋を経てドンドコ沢をひたすら降る。ドンドコ沢の枝沢を行ったり来たり、
よくぞこんな山道を切り開いたものだと半ば感嘆し、半ばあきれ、へばりながらの下山。
途中の五色の滝、白糸の滝、鳳凰の滝、南精進ヶ滝のうち鳳凰の滝の見学をパス。
鳳凰小屋から青木鉱泉まで標準タイム3時間半のところ6時間半もかかってしまった。
登りよりも下りに時間がかかるのが我々夫婦の山歩き。
タカネビランジの他にもホウオウシャジン、フシグロセンノウ、レンゲショウマの花々、
そしてヤマイグチ、チチタケ、ウスヒラタケ等のキノコもあって、立ったり座ったり大忙し、
久しぶりの筋肉痛、ああ!