富士山の眺望を求めての山登りはそこはかとなく気ぜわしいものです。
出発時には晴れ渡っている空も陽が高くなるとともに霞みたち雲もわき上がってきます。
山頂に到達するまでその秀麗な姿を見せていてくれるかどうか心配なのです。
登山口から御坂峠までは時折姿を見せる富士を振り返りながら暖かい南斜面を登ります。
高度を稼いでいくとやがて雪道となりまもなく御坂峠。雪が降り積もった峠からは木々の間に八ヶ岳と甲斐駒ヶ岳が覗いています。
御坂峠からは完全な雪道。アイゼンを持ってこなかったことがちょっぴり悔やまれます。左に富士山、右に八ヶ岳を盗み見しながら、冷たさを増す北風の中細い尾根道をひたすら山頂を目指します。
御坂黒岳は昨年に続いて二度目。正面には河口湖と富士山、右手に眼を移すと前回は展望できなかった南アルプスの山々が冠雪に輝いています。聖岳、明石岳、荒川岳、さらに間ノ岳、北岳と百名山が連なっています。
広い展望は得られるものの既に陽は高く、富士の姿に朝の光による鋭い秀麗さはなく、そう言えば、ここは午前中に訪れるべきであったと、昨年の反省を今さらながら思い浮かべるのではありました。