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小平漁協のフォト日誌

槍ヶ岳 3180m

2001.8.2〜4

8月2日(木)
  上高地  〜  横尾(泊)
  8:45     13:00

梓川 ヒメシャジン

 先々週の八ヶ岳の後遺症か、右足の股関節の痛みが一週間以上も続いていた。それも歩き始めの一時だけ骨と骨が直接擦れるような痛みだ。医者に診てもらいレントゲンまで撮ったあげく、異常は無いと言われたけれどいっこうに痛みがおさまらない。このままでは槍ヶ岳は諦めざるを得ないのかと一時は覚悟したが、出発二日前には不思議と痛みが消えていた。

横尾大橋  例によって前夜のうちに自宅を出発。沢渡の駐車場でしばし仮眠の後、上高地行きのバスの乗客となる。十数年ぶり三度目の上高地、一度目は学生時代に友人との奥穂高岳登山、二度目は子供達を連れての上高地散策、あまりの過去のこととて記憶もおぼろげだけれど、河童橋から眺める峰々の美しさは変わらない。今回は女房同伴の典型的?中高年夫婦の登山。梓の清流に歳月の移ろいを思う。

 一日目は都会生活の塵芥落としと足慣らしのために横尾山荘までの軽いウオーミングアップで済ますことにして、梓川沿いの平坦な道をのんびりと歩く。明神池を見学したり、清流の中に魚を探し、ヒメシャジンの花を愛でたりと、ほとんど物見遊山。道を人を恐れるでもなくヒョコヒョコと横断する山鳥をよくよく見れば雷鳥だったりして、まもなく雷鳴が轟き、横尾山荘に到着するころには夕立となった。夕立から本格的な雨になったので早めに山荘に入って休息。横尾山荘のお風呂はことのほか嬉しかった。

8月3日(金)

   横尾山荘 〜槍沢ロッジ 〜 天狗原分岐〜幡隆窟〜 殺生ヒュッテ〜 槍ヶ岳山荘 
   5:30     7:00      9:40   11:45   12:30 13:30  14:40 

槍ヶ岳

 翌朝は雨も上がり前穂高が朝焼けに染まった。歩き始めるとすぐに、前日のうちに槍沢ロッジまで上がって距離を稼いでおくべきだったという思いが募ってくる。多少は山道らしくはなってくるが昨日とさほど変わらない平坦な道が延々と続く。途中の槍見ポイントもミッシングしてしまったから、槍沢ロッジからはひたすら歩いて登り詰めるだけ。

 楽しみは次々と顔を出す高山植物の花々。センジュガンピ、ハクサンフウロ、シナノキンバイ、イワオトギリ、ヨツバシオガマ、クルマユリ、ミソガワソウ、ニッコウキスゲ、そして初めて見るタマガワホトトギス、ツマトリソウ、ミヤマリンドウの花々。その都度デジカメを構えてはシャッターを切る。これを何十回となく繰り返す、これが謎の間接痛の原因か。初めて目にしたミヤマリンドウ、ツマトリソウのピンぼけが恨めしい。振り返ればいつのまにか西岳より高く常念岳が背を伸ばしている。

 ヨツバシオガマ タマガワホトトギス ミヤマリンドウ

イワギキョウ トモエソウ

 高度を上げるに従って花々の様相も変わって、ミヤマダイコンソウ、チングルマ、ウサギギク、ミヤマツメクサ、イワギキョウ、ミヤマオダマキ等々。漸く槍の穂先の三角錐を眺めることができたのは3時間以上も歩いてから。

槍ヶ岳の穂先   幡隆窟からは槍の穂先を眺めながらのひたすらの登り。団体さんやらグループが次々と追い越していく。集団によって気力を持続させる不思議を思った。それでも足さえ動かしていればやがて山頂に到達するのが山登り、9時間近くかけてようやく槍岳山荘に到着。

見上げれば指呼の間に槍の穂先が聳え立っている。穂先に向かう岩道は登山者の列で渋滞。穂先を見上げて一缶500円なりのビールで祝杯を上げたら、穂先へのアタックをすっかり失念してしまった。多少酔いの入った一団が次々と到着する他の登山者にエールを送っていた。



  8月4日(土)

  槍ヶ岳山荘〜山頂〜槍ヶ岳山荘〜 殺生ヒュッテ 〜 槍沢ロッジ 〜 横尾山荘 〜 上高地
  4:15  4:45  5:20 6:15  7:20    10:40 12:00   13:20   16:40 

槍ヶ岳山頂

 寝苦しさで夜半に目を覚ます。雲海に浮かぶ山々が月明かりの夜空にくっきりと黒い影を浮かび上がらせている。ほっと安堵してもう一眠りして起きたのが3時半、山々はガスに閉ざされて何も見えない。半ばがっかりしながらも一縷の望みをつないで蚕棚の寝床から抜け出し穂先に登る準備を開始。それでも穂先を目指して登り始めている人々のヘッドランプがあちこちとサーチライトのような光芒を放っている。岩壁でも渋滞を恐れて準備もそこそこに岩場に取り付く。

山頂には既に20人ほどが座り込んでいてご来光を待ちわびていた。だがガスに隠れて周囲の山々はおろか光の影さえ見えない。業を煮やした若者達が「儀式だ!儀式だ!」と叫んで上着を脱ぎ始めた。「おまえも脱げ、脱げ!」とリーダー格。女の子達が囃し立てる。そしてそのお陰かどうか、瞬間的に雲が切れ一瞬だけ朝焼け雲が光る。期せずして起こる歓声と拍手。

雪渓

 それっきり、雲はしっかりと朝日を閉ざし、強い風が冷たいガスを運んでくる。早々に退散。昨日までの晴天は何だったのだろう、昨日のうちに登っておくべきだった、ビールなんぞ飲むんでなかった!と、ブツブツと穂先を降り始める。

でも、とにもかくにも槍ヶ岳に登るだけは登ったのだ、多少の天気の加減は運否天賦。次は何処に登ろうかなどと相談しながら上高地までの長い帰途についた。二日かかって登った道を一日で戻るのはさすがにきつかった。

2001.8.5

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