前回の「鮎」と同じ小田淳氏の作品。釣り小説というと「太田蘭三」
「夢枕貘」「高橋治」他、数人の名が想起されるが、
釣りの時代小説ということになると「小田淳」が第一人者かもしれない。
登場する主人公は決まって無聊をかこつ武家の次男三男、いずれも武芸の達人であり、
かつ釣りの名人。剣技を磨くと同様に釣りの技を磨くことで、
辛うじて武士としての緊張感と存在感を維持しようとしているかのよう。
そんな時代をベースに幻談奇話を織り混ぜて物語は展開する。
著者にとってサラリーマン社会と武家社会にはその太平さ?において共通するものがあるとの認識があるようで、
そのあたりがイマイチというか、おおいに喰い足りない思いがする。
おそらく著者は現在のように経済環境も競争も厳しくなかった時代にサラリーマン生活をおくっていたのだろう。
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