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小平漁協の通勤娯楽

1999.11.28

 前号のNo41で紹介した「週刊朝日」の「銀山湖に放されたブラックバス」は11月16日号ではなくて、11月26日号掲載でした。 何人かの方からご指摘を頂きました。訂正してお詫び致します。
 バサーにとってはけっこう居心地の悪い記事でしたね。 かくいう私も何回かバス釣りをしたことがあります。初めてチャレンジしたのは琵琶湖。フィッシング・ネットワークの仲間に指導されて、 ワームで40センチほどのバスを10尾釣り上げました。リリースするのが惜しいくらいの美味しそうな魚体をしていました(^−^;
 で、ここはしつっこくブラックバス釣りの本をご紹介しましょう。釣りの楽しみにも全く別の切り口があることを教えてくれた本です。


 
「誤 釣 生 活」 糸井重里 ネスコ・文芸春秋 1996年12月6日


 46歳にして初めて釣りにはまり、しかもその知名度故に「バスフィッシング業界の広告塔」とか 「バスフィッシング・ブームの仕掛け人」とか名指しで「批判」されてしまったコピーライターのエッセイ集。
 バスフィッシングにのめり込んでいった経緯やその魅力についての説明は著書を読んでいただくとして、ここはやはり、 「キャッチ&リリース」や「ギャング放流」について筆者がどのように考えているかを見てみよう。

 アメリカでは「意外とバスは食われてるらしい」としながらも、アメリカから移入された日本では、 「食える魚であるバスを、”かならずリリースしましょう”というルールで釣ることは、日本独自のスタイルなのだ。 しかも、このスタイルは、ほとんどすべてのバサーたちによって、みごとに守られている。」とし、 このことによって「日本のバスフィッシングは”資本主義のシミュレーション”から” 高度資本主義のシミュレーション”へと飛躍することになった」と主張する。
 海釣りを例にとって、 自分の釣り上げた魚の価値を魚屋の値段に置き換えることによって「魚そのものの値段が、 なんと釣りという行為の労働にたいして支払われる賃金になってしまうのだ。」と指摘する。 一方で、キャッチ&リリースすることによって外部の価値に転換されることなく「その結果(釣れた魚がここに存在すること)が、 得られるにいたった過程と行為、主体(誰が釣ったんだよ?ということ)に、すべての価値は割りふられるのである。」とし、 そのことが「資本主義のシミュレーションとしてもバスフィッシングを、さらに高度な段階へと押しあげようとしているのだ。」とする。
 要するに「バスフィッシングの世界は現代の社会に明確に対応している」ということのようだ。

 「ギャング放流」については、「流行しているバスフィッシングを背景に、ギャング放流という犯罪があった。 犯人は法によって裁かれる。これだけである。」と一言。さすがに不法放流の上に成り立っている釣りに「居心地」 の悪さは隠しきれないようで「ブラックバス=害魚論」に反論を試みつつも、「不法放流は悪い、 だがバス釣りは悪くない」とキレが悪い。不法放流を「犯罪」だと認めるのであれば「ブラックバス=害魚論」 に反論を試みる必要もないと思うけどな?
 もっと突っ込んで言うなら、バスフィッシングが流行しているから ギャング放流が行われているのではなくて、ギャング放流でバスポンドを増やしてバスフィッシングを さらに流行させようと仕掛けている存在がある、と考えるのが順当だと思うのですがね。

    それでは、著者にとって釣りとは何なんだろうか?

「考えてみれば、バス釣りなんて、 もともとエゴイズムのかたまりみたいなゲームだ。他の誰よりも多くの魚を、他の誰よりも大きな魚を獲得する闘争なのかもしれない。」

 「釣りなんて、もともと、人間の快楽のために、機嫌よく泳いでいる魚たちをハリでひっかけてひっぱりまわす、 ろくでもない行為である。そういう見方だって、あっていい。そんな野性的な、乱暴な楽しみなのだ。 だから、やりすぎをしないように、マナーやルールをつくって、人間らしくやっていきましょうやと、 取りきめをしているのだ。」

 う〜ん、ここまでくるとほとんど開き直りだね。 一応いろいろ抵抗を試みてはみたけれど結局は破綻をきたしてしまったことをしっかり自覚している風。 あるいは45歳にして無邪気なバスフィッシングにのめり込んでしまったテレがそうさせるのか。
 自然や生態系も環境の問題も本書では一言も触れられてはいない。でもまあ、思いっきり素直でいいかも。 コピーライターの神髄ここに有り!って感じ。おまけに「人間は誤る動物である」とか。
 禁断の果実を食べてしまった思いっきりアメリカンな奴!(^−^)バサーの率直な心情を吐露した好著、一読の価値あり!と・・・・ ここでは言っておこう。

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