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小平漁協の通勤娯楽

1999.9.24

   何気なく入った書店で発見した「宝島社新書」の創刊第一弾の三冊のうちの一冊の帯封に魚のイラストとショッキングなコピーを発見。

「バス釣り」は犯罪である。

 何はともあれ直ちに購入、往復の通勤電車の中で一気に読了!
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初めてのバス体験は琵琶湖。もう10年ほども前のことだ。FNの仲間に教授されて40センチほどのバスを10数尾釣り上げた。 ワームでやったのでほとんどキス釣りの感覚だったが、これがけっこうファイトするので面白かった。 バスが害魚扱いされて久しく、釣り上げたら持ち帰ることが奨励され、学校給食にも供されて話題になった頃のことだ。 現在では全国各地の湖沼に棲み着いてすっかり馴染んでしまい、市民権を獲得したかのように見える。
「ブラックバスがメダカを食う」秋月岩魚 宝島社新書 660円1999年9月24日

著者のブラックバス問題についての主張は極めて明快だ。

 第1点は、「魚を使った大規模な環境破壊」 であること。著者はこれまでの単純な「害魚論」の立場をとらない。害魚の反対側にあるのは「経済効果のある魚はいい魚」 という考え方だから「だれが経済効果を得るかによって害魚か益魚かは変わるから、議論はいつまで経っても平行線」であり、 生態系保全の観点から考えるべきだとする。

 第2点は「バスの密放流は犯罪」であること。 これまでも各県の実状にあわせた漁業調整規則はあったが、内容や罰則の適用の有無もまちまちで実効性がなかった。 しかし92年に「都道府県内水面漁業調整規則における外来魚の移植制限」が定められ「今日では、 バスの密放流は明らかに犯罪、違法行為」になったとする。さらに「たとえ規則で禁止されていない場所であっても、 他者が所有する場所に、自分の好きな魚を無断で放流するというのは、所有権の侵害にも当たる」とする。

 第3点は、「密放流という犯罪によって日本全国に広がった魚の上に、一つの業界が築かれた」という点。 「バス釣り業界とでも呼ぶべき一つの業界がある」「この魚を定着させることを意図した組織的な密放流が全国各地で行われた」 「業界に関係ある何者かが密放流を行ってきた可能性は、とても高い」「犯罪によって育成された土壌に成り立つ商行為など、 許されていいはずがない」

 そして著者は「環境・生態系に深刻な破壊をもたらす ブラックバスを早急に駆除しないと日本の河川・湖沼は死に絶えてしまう。」「バスは日本にいてはいけない魚」と明快に断言する。
 「なぜか日本じゅうにいるバス」と容認し、ブラックバスの存在を既成事実化することに異議を唱え 「バス絶対駆除、バス釣り禁止」の運動を続けていくことを宣言している。

 著者はバサーにも苦言を呈する。
 こうした犯罪の上に成り立っているブラックバス釣りを「ぼくらは関係ない、そこにいる魚で遊んでいるだけ」 と無邪気に言い切れるのか?

 著者はバス釣りの「約束」である「キャッチ&リリース」 についても本当に精神論からきているのかどうかと疑問を呈する。「密放流に対する取り締まりが厳しくなるなかで、 違法な密放流による増殖も難しくなってくる。つまり、バスという資源を維持するためには、 キャッチ&リリースを徹底することが絶対に必要なのだ」業界あげてのキャッチ&リリース・キャンペーンが 「自然保護」の名のもとに行われもした。
 そして「そもそも、釣り人にアメリカ流のキャッチ&リリースを呼びかけるというのも、 実は必然性のない話なのである。日本にも昔から、日本なりのキャッチ&リリースがあった」 「サイズの小さいものを放すのは当たり前だったし、食べることをふくめ、処理しきれないほど釣るのは浅ましいと考えられていた」 「バス釣りとともに日本に入ってきたキャッチ&リリースは、思考停止状態を釣り人に強いるもの」だと指摘する。
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  こう見てくると釣り人の美徳とされるC&Rもバス釣り業界の巧妙なプロパガンダだったのかと懐疑的になってしまう。
 それにしても、日本全国へのバスの密放流からその存在の既成事実化、バス釣りブーム、バスプロの誕生、トーナメントの開催 ・・・・これを一連のプロジェクトとしてプロデュースした人物または組織があるとしたら驚異、いや脅威ですらある。
 最近ではラージマウスを凌ぐファイトをするというスモールマウスが、山女魚や岩魚の生息域をジワジワと脅かしはじめているという。 ただの釣り人になし得ることでは決してなく、組織的に密放流を繰り返している影の存在に、私も憤りを禁じ得ない。
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    ブラックバスの擁護論としては、著者が本の中で批判している「釣り人社」から出版されている下記の本が参考になる。

「ブラックバス移殖史」 金子陽春・若林努

釣り人ノベルズ 950円 1998年2月1日


 二人の著者の立場や論法の違いはあるのだが、急ぎ読み返しのアバウトな印象では下記によってバス擁護論を展開している。

 ・バスが害魚であるかどうかは立証されていない。
   (研究不足、水質汚染も原因)
 ・各地への移植は「私人による放流」「恣意放流」
   (無断放流は漁協が話し合いにおうじないため)
 ・バス放流は釣り場を管理する側(漁協や行政)にも弱い面があったから
   (「恣意放流」は釣り人不在の水産行政の結果)
 ・生態系をうんぬんするなら鮎その他の放流はどうなのか
   (河川湖沼の人工化、釣り堀化)
 ・釣り人の立場も守られるべきだ
   (漁業で生計を立てている人は減少している)

 どちらに軍配を上げるか、どちらの立場に立つか、 などと言うことでは全くないのだが、自ずと見えてしまうものがある。いずれもバサー必読の書。

 でも、琵琶湖のブラックバスはエキサイティングだったし、なによりも、旨そうだった。(^−^;)

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