不況期にはアウトドアレジャーが流行り、俄釣師が山や川、海に満ちあふれると言う。
だとすればもっと釣りの本が出版されてしかるべきだが、釣り本は今年も何故か不漁気味。
そんな中でやっと出版された待望の一冊。もっとも通勤電車のなかで本を眺めるゆとりもない今日この頃ではあるけれど。
書架の片隅に何故か捨てられずにいる古びた一冊の本がある。
カバーも帯封も無くなってしまった茶表紙の本、昭和51年に山と渓谷社から発行された「バックパッキング入門」がそれだ。
必要最小限の生活用具一式をパッキングして背負い野山を旅する「バックパッカー」を日本に紹介した
「カタログ」のような本なのだが、私のその時々の趣味嗜好の気紛れな変節にもめげ
ずに生き残ってきた
数少ない書籍のひとつだ。めったに頁をめくることはないが、どうやら私のアウトドアライフのバイブル的な位置を占めている。
その著者が故・芦澤一洋氏だ。氏が日本におけるフライフィッシングの草分け的存在であることを知ったのは
随分と後のことだ。
「故郷の川を探す旅」 芦澤一洋 小学館文庫 480円 1999.8.1
「旅をしながらしきりに考えている。この地は、残りの人生数年をすごすにふさわしい場所だろうか。
あるいはまた、この川は遺灰を撒くよう指示するに足る流れだろうかと。たぶん私は本気で故郷を、
あるいは故郷と思い込める土地を探しているのだと思う。」
日本のフライフィッシングの黎明期にアメリカ西部のイエローストーン国立公園を拠点にして、
アラスカやカナダ、ニュージーランドなど各地の川を釣り歩いた著者の述懐だ。
「感動を一度だけで終わらせるには、鱒はあまりにも偉大すぎる」こんなキャッチフレーズで「キャッチ&リリース」
をアピールすることによって、フライフィッシングをブームにしたイエローストーン。この地をホームグランドにしながらも
「鱒のいる風景」を求めて旅を続けた著者にとって「故郷の川」とはいったい何処だったのだろうか?
横文字のオンパレードが私にはちとキツイが、アウトドアライフの魅力、
フライフィッシングのスピリッツ満載のエッセイ集だ。
つり人社の新書版つり人ノベルズで「フライフィッシング紀行」
「続・フライフィッシング紀行」が出版されている。「続」の方は日本の河川の釣り紀行。
いずれもフライフィッシャーマン必読の書!と言っておこう。
フライフィッシャーマンの先達、故・芦澤一洋氏に合掌!
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