安曇野風来亭 道楽日誌 操業日誌 戦国山城散歩 キノコ図鑑 小平漁協書籍部 自己紹介

小平漁協の通勤娯楽

1999.5.24

そろそろ鮎釣りが解禁ですね。四万十川や狩野川といった超有名河川は既に解禁、一般河川も続々と解禁中です。 昨年は冷水病が原因で不漁だったようですが、今年は如何相なりますでしょう。 3〜4年前から友釣りにも手を染め始めた私としても気になるところです。
 もっとも、「渓流も真面目にやらないでナンチュー浮気もんじゃあ!」とお叱りを受けそうではありますが。

釣竿

「菜の花の渓」 小野 勝美 つり人ノベルズ 950円 1999.5.20

  「心に傷を持つものが釣りをする」と言ったのは、かの漂白の釣り師、山本素石翁だったと思うが、 表題作の主人公の持つ心の傷はなんとも重苦しい。
 明るく菜の花が咲き乱れる渓に大人になって再び訪れた釣り人が、 かって自分に釣りを手ほどきしてくれた老人と40年振りに再会する。 それと気づかぬ老人は、菜の花が咲く頃にきまって思い出す大事件の話を問わず語りに始める。
 戦後まもなく親類を頼ってきた親子との出会いと心のふれあい、愛情のようなものの芽生え、 その子に釣りを教えたこと、親類が殺害され親子が失踪したこと、母親のみが水死体で発見されたこと等々、 目の前にいる釣り人がまさにその子が成長した姿であることに気がつかずに語りかける。
 事件は母を庇おうとした息子によって引き起こされたものだった。 事件は犯人親子の自殺ということで落着したが、老人の心に深い傷を残したのだった。 その子は都会に逃げ帰って浮浪児の群れのなかで生き伸び、 今こうして昔と同じように菜の花が咲き盛る渓に釣り人として戻ってきたのだった。 そして最後まで名乗ることなく、老人の話にともに涙するのだった。
 男は三尾のヤマメを釣る。かって釣り上げることが出来なかった幸せを求めるかのように、 母と自分と、そしてもう一尾は老人のために。

 表題作の他、「水鳥」は釣りを教えられたフライフィッシャーに捨てられたOLが釣りに開眼する逆説的な物語。 「閉ざされた渓」は釣りを通した夫婦愛の物語。「陽だまり」「犬吊るしの滝」は釣りのシーンがある作品。
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 同時発売で

「続・釣魚礼賛」 榛葉 英治 つり人ノベルズ 950円 1999.5.20

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