今年も鮎は絶不調のままシーズンを終えようとしている。自分の下手さ加減を割り引くにせよ釣果は年々減少する一方。
放流鮎に異変が起きているなんて説もあるが真偽のほどは不明。折しも台風4号接近による大雨で各地の河川が氾濫、
大きな被害が発生している。何かが大きく狂い始めているような予感さえする。
表題作の「岩魚」「山女魚」の他に「鮎師哀歓」「釣り師逝く」の短編二編を収めている。
いずれも小田原の早川を舞台にした鮎釣師の物語。竿や仕掛け、釣技、大物へのこだわり
、そして自然破壊や環境汚染への静かな怒りを織り込んだ釣り小説。「釣り師逝く」
は鮎竿を失うまいと濁流に消えた鮎釣りの師匠を追悼する若者の心情を描いた佳編。
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