「おふくろの裁縫箱から糸を盗み、針金を拾って小さな釣り鈎を作り、竹の小藪に分け 入って手ごろな竹竿を作り上げ、密かに出かけた笛吹川の支流で、生まれて初めて釣 り上げたアマゴ。・・・・・・以来何十年、私は少年のままとなってしまった。あの 時遠くで鳴いたカッコウの声、近くでコロコロと鳴っていたせせらぎの音、すべてが 今も鮮明に脳裏に残る。」甲府盆地に生まれた著者が釣りにやみつきになった原体験だ。 以来、釣りの縄張りを広げ、渓流から海釣りへ、 海外での巨魚釣りへと、「ノー天気な釣りの旅が始まってしまった。」 黒澤映画の常連俳優だった著者の半世紀を超える釣り人生の折々のエッセイ集。磯釣り 船釣り、ルアー、フライフィッシング、何でもござれの解脱の境地。いっそここまでくる とコダワリを超えて爽やか!「釣りが好きでよかったと思う。 いろいろな面つきをした魚たちともめぐろ逢えたし。大自然の中の動物たちにも囲まれた。 おまけに様々な人々とも出会えた。しかも、 普通に過ごしていたなら、全く信じられないであろうような出来事にも出くわし、 とても満足である。」1927年生まれの74歳、 「私はまだまだ釣りを続ける」