解禁しましたね。昨日今日あたりは近郊の解禁河川はどこもかしこも竿が林立して釣り
堀状態だったことでしょうね。かくいう私、昨夜の酒と花粉症の徴候に怯えてせっかくの
休日をウダウダと無駄にしてしまいました。
曰く、「自然を学んだものは、まだそれに気づかぬものに教える義務がある。
エコ・エンターテインメント小説を提案する」
「小説 さかなかみ」 浜野安宏
廣済堂出版
1800円 2001.10.1
アパレル業界に勤める主人公の川辺は29歳、ファッションという無駄を創り出さないと
産業がまわらない社会に不毛の砂漠を見ていた。
初めこそ「欲望の先取りだ!」と勢い込んでいたが、
不毛の欲望を生産し続けることに底なしの虚しさを感じるようになったのだ。
会社を辞め、東京のマンションを引き払ってキャンピング&フィッシング用品を4WD
に満載して北海道に向かう。とりあえずはメーター級のイトウを釣りたいと。
函館でジャズシンガーの夢に破れて暮らす由美子と出会い、さらに、世界的な地域計画
プロデューサーであり、フライフィッシングの先達である山岡と知り合うことになる。
母川への回帰本能を利用されて、河口付近で一網打尽にされるサケの群、採卵され養殖
されて放流される繰り返しの中で、河口にたどり着いた頃には遡上してもいないのに既に
婚姻色をなすサケの哀れさ、生産工場化した河川の貧困を憤る川辺。 一方、山岡は環境保護活動のリーダーとして、
北方四島に原北海道を残すべくフィッシング&アウトドア・パラダイスにしようと運動している。
そんな山岡と川辺の間で揺れる由美子。
三人それぞれの共感し反発しあいながら根釧原野、北方領土、アラスカ、そしてシベリ
アへと、大自然の中で幻の巨大魚イトウとの出会いを求めて物語は展開する。さかなかみ
=イトウとのファイトシーンは迫力ある。
環境保護や河川漁業、北方領土、先住民族など様々な問題を提起しながらも、それをひ
たすら嘆くかのような詠嘆調の記述に流れ、登場人物に現実感が乏しいのが惜しまれる。
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