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小平漁協のフォト日誌

超ビンボー旅行<ヨセミテ渓谷>

 この静かなる大不況の中、 さすがに大っぴらに海外出張という訳にもいかず、自主的な研究の為ということで、研究予算の範囲内で実費は支給されるが、      社命ではないので休暇扱いという変則的な米国出張になってしまった。 経費を切り詰めるために成田〜ロス往復61000円也という格安チケットを購入、 ロス〜フレズノ〜ヨセミテ〜〜モントレー〜サンタモニカ〜ロスという行程を  レンタカーを駆ってモーテルを泊り歩く超怒級ビンボー旅行。
 入国審査では宿泊場所を記入してなかったので、 書類を突っ返され、「まだ決めてない」と説明しても冷たく「NO]の一言。 東洋系の係官が「ホリディ・インと書けばいいのよ」と教えてくれて何とかパス。 同行のK君もN君も数回の渡米経験者とはいえ、なんとなく先行きが思いやられる。 海外に来て日本車に乗るのも興趣がないというので、借りた車はボルボ。これならぶつかっても 安心?だ。 この日のうちに出来るかぎりヨセミテに近付いておきたい、ロス市内を見物する時間はない、目指すはフレズノ。 右側通行にもフリーウエイ走行にも慣れ、70マイルほど北上したゴーマン のコンビニで休憩。
  ところが、いざ出発という時に 車のドアが開かない。鍵が壊れているのか、ドアだけ別のキーが必要なのか?んな、 馬鹿な! レンタカーのオフィスとすったもんだの挙げ句、結局近くのGSに救けを求めて開けてもらったが、約2時間のロス。 時計はもう午後5時を廻っている。宿はまだ決めてない。 代車はさらに140マイル北上したフレズノの空港に用意してあるとのこと。 フレズノ市内でさんざん迷った挙げ句、ようやく空港を見つけて代車のフォード・クラウンに乗り換えてモーテルに入った時は 9時を過ぎていた。米国の1日目、この日はそんなこんなでまともな食事にはありつけなかったが、 車だけはぐっとグレードアップしたので皆なんとなく満足して熟睡。

 2日目はフレズノ市内を車でざっと流して見学後、 一路ヨセミテを目指す。窓外に広がる単調かつ荒涼とした牧場風景を眺めながら、快調に車を飛ばす。トンネルビューからの眺めは圧巻だ。 エル・キャピタンやハーフドームなど、4000フィート余りもの断崖絶壁の間を針葉樹の森林が埋め尽くし、 その中を清流が縫うように流れている。 
 バックパッカーのメッカ、ヨセミテ国立公園。 その昔、バックパッカーに憧れて登山の真似事をしていた時期もあったから、「来た、やっと来た」という感激が静かに湧いてくる。 しかし、バレーの中に車を進めるに従って軽い失望感に襲われる。公園内にはゴミひとつ落ちていず、 森も岩山も確かに美しく壮大なのだが、もっとワイルドな雰囲気を期待していたのに、これでは所謂「観光地」ではないか。 無料のシャトルバスや、無蓋のツアーバスが行き交い、観光客で溢れている。日本でいえば差し詰め上高地というところか。 彼の地だって昔は楽園だった。 でもまあ、何てったって視察旅行だから「こういうものか?」と観察することに。 林間のキャンプサイトはさすがにゆったりとスペースが確保されており、多数のモーターホームが木漏れ陽を浴びて輝いている。 ここではモーターホームが主流で、RVにテントというキャンパーは驚くほど少ない。日本のRVキャンプとは随分雰囲気が異なるし、 その生活感の無さに驚く。もっとも、米国ではRVとはモーターホームのことを言うらしい。 ヨセミテビレッジやカリービレッジの各施設を見学がてら早めに土産物を購入。両方のビレッジのアウトドア・ショップも しっかりチェック、ルアーを入手。 同じメップスのスピナーの価格が二つの店で異なるのも愛敬だったが、 コールマンのホワイトガソリン4リッター缶が5.49ドル、その他のギアーも日本の3分の1から半分位の値段なのには驚いてしまった。 この日はヨセミテから東30マイルほどのかっての金鉱の町マリポサに宿をとる。

 3日目、グレイシャー・ ポイントまでトレッキングするというK君を途中で降ろし、釣りをしてみたいというN君とともにビレッジでライセンスを購入。 8.4ドル也。アウトドアショップの店員がルールを説明してくれる。バレー内ではルアー、フライともバーブレスのものを使用すること、 それ以外のエリアでは餌釣り等なん でもOK、レインボーはリリースすること、ブラウンだったら5尾までキープOKとの こと。 バレー内では小物しか釣れないから下流に行った方がいい、下流なら必ず釣れると、請け負ってくれた。胸までは叩かなかったけど。
アドバイス通りアーチロックからダムまでの間にポイントを求めて入渓するが、もう陽は高く上がり、 入り易そうな場所にはそこかしこに足跡が乱れている。繰り返し繰り返し責めたてられているのだろう。 日本から重く嵩張るバカ長をバッグの隅に忍ばせてきたが、ここではほとんど役にたちそうもない。 徒渉も遡行も困難な川だ。流れは淵のように深く幅もあり、 ゴロゴロとした巨岩大石の間を縫っている。上流に向かって移動しようにもすぐに巨大な岩石に行手を阻まれる。 しかもその岩は油でも染み込ませたかのように滑りやすい。狭い範囲だけ探っては道路に戻り、 次の入渓地点を探すという非効率的な釣りだ。しかもテンカラではほとんど足元しか探れずすぐにギブアップ。 釣りにならない。研究不足の作戦負けというところか。
 ルアー初挑戦のN君はといえば、 あちこちにルアーを引っ掛けて悪戦苦闘している。必ず釣れると言われたのでけっこうムキになって頑張っているようだ。 こんな中途半端な釣りを経験させたのでは後々に響くので、日本に帰ったら本格的な釣りに引きずり込んでやろう。 結局、テンカラにもルアーにもヨセミテの魚は色気を見せてはくれなかった。 岩陰から30センチほどの黒い魚影が走るのを目撃したのが唯一の成果。
  2時間ほどで納竿、バレー内をレンタサイクルで暇つぶし。約4時間のトレッキングから満足気な顔で戻ってきたK君をピックアップ、 不完全燃焼の私はヨセミテから流れだすマーセド川の流れを未練がましく覗き込みながら、マリポサの宿に向って車を走らせる。
10マイルも下っただろうか、「あっ!魚がいるっ!」N君がいきなり叫ぶ。急停車して指差す方向を凝視する 「ほら、あそこッ!」川幅いっぱいに広がる深い流れの対岸を1メートル位の褐色の魚が悠然と上流に向って泳いでいる。 「あんなのこの道具じゃ釣れないよ、糸がもたない」リールに巻いてあるのは2号。それでもやってみることにした。 他の魚がヒットするかもしれない。巨魚は対岸に覆いかぶさっているブッシュの下でジャンプして消えた。 スピナー、スプーン、ミノーと試みて、ラパラのレッドヘッドにようやくヒット。ジャンピングして突っ込んで、 そして上がってきたのは、小さいながらも元気で精悍な顔つきのバスだった。ストライプ?約18センチ。 今年はあちこちで竿を出したけど、ほとんどこんな半端な釣りばかり、ま、行き掛けの駄賃のような釣りではこんなものか!?
 真面目な釣りがやりたい!とつくづく思う。

 ヨセミテとマーセド川で竿を出したという実績だけを心に留めて残りの日程を消化。

  4日目、マリポサからマーセド経由で延々と続く牧場風景の中、モントレーへ   
  5日目、モントレー半島を一周した後、西海岸の風景を横目にサンタモニカへ。
  6日目、サンタモニカで買物を済ませてロス空港へ。
 途中、様々なタイプのキャンプ場やゴルフコース、ショップを視察。 ガス欠寸前の車で道に迷ってハラハラしながらも、何とかギリギリでセーフ、タイ航空の機上の人となりました。

   6日間の走行距離は1135マイル、約1820キロ。
  5泊7日の総経費は3人で約30万円、チョー貧乏旅行。                         


1993年9月12日(日) カリフォルニア州
 場  所:カリフォルニア州ヨセミテ渓谷〜マーセド川
 日  時:93/9/12          
 天  候:晴    
 仕  掛:テンカラ、パックロッド、ルアー(ラパラ)       
 釣  果:バス18センチ                          


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