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小平漁協のフォト日誌

初めてのフライフィッシング<白馬村姫川>

         
 姫川の支流、平川の右岸にある白馬47スキー場を会場として開催されたオートキャンプフェスタ’94in白馬は今回で3回目になる。色とりどりのテントや車がギッシリと並ぶ様はさながら難民キャンプ風ではある。しかし、それぞれのサイト毎に家族がいて、サイト一枚毎の幸せがある。なにやら家族ごっこ幸せごっこの見せ合いだと皮肉も出そうだが、既に子育ての季節を終えた我が身としてはうらやましくもあり、また、仕掛け人の一人としてこれは良しとしよう。  
 そんな感慨に耽る余裕も生まれるのは、FNの仲間が助っ人に集まってくれたからかもしれない。山形からK++さん、福島から「大」さん、大阪からKaterさん、岐阜からたけさん、松本からSOCKEYEさんとFuzzyさんが駆け付け、フェスタの参加者のためにフィッシングスクールを開講してくれた。        
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 フェスタも無事終了、クライアントをお見送りしたところで私も仕事から解放されて無罪放免。「さあて、釣りだあ!」
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 小学校5年生の夏、生まれ育った松本から富山に引っ越した。黒煙を吐くSLに乗って松本から大糸線で糸魚川に抜けて富山に向かった。姫川に沿って縫うように走る車窓からの渓谷やアルプスの山並みの美しさはいまでも脳裏に焼き付いていて、訪れる度にその風景を探し求めている。姫川は私にとって特別な感慨を抱かせる流れなのだ。いまイブニングライズを待ってその姫川の川原にうずくまっている。

 初めて握ったフライロッド、「大」さんとKaterさんから直々の指導を受けてキャスティングの練習。FNの講師による個人授業だ。あとはじっとその瞬間を待つだけだ。ライズは起きるのか?フライはポイントまで真っ直ぐ飛んでいってくれるのか?
 「あそこ!」大さんが指さす川面に波紋が広がる。「ほら!あそこにも」
やがて川面のあちこちでライズが始まった。「ピチャッ、ピシャッ」と流れを切り裂いて魚影がきらめく音がする。それからが大変だった。にわか仕込みのフライフィッシャーマンのこととてラインが素直に言うことを聞いてくれない、いつのまにかフライが千切れて霧散。
 「大さ〜ん、フライがな〜い」
結び手の覚束なさに見るに見かねた大さんがフライを結んでくれる。これを三度四度、大名釣り?
 「フライは川を見ながらむすんじゃいけない」
 「キャスティングの練習はライズの無いときに」
格言に頷きながらも目線は川面に注いでいる。
 「早く早く」(^^;
 ライズはいまや川面全体に広がり、ちょっとやそっと騒いでもイワナの饗宴は止みそうもない。「これがイブニングライズ」初めて見聞する魚の狂騒曲。やがて大さんのロッドが曲がり、流れの中から姿を現したのは 22〜3センチの綺麗なイワナ。 
 「あのライズひとつひとつがこれと同じかこれ以上のサイズだよ」と、大さん。 
ロッドを振る、身体が泳ぎ、ラインが水面を打つ、焦る、焦る。「基本にチュウジツに忠実に」自分に言い聞かせながらキャストを繰り返す。「ピシャッ」とフライに魚が出る、アワセをくれる、しかしフッキングしない。
 「チッ、馬鹿にしてる、からかってやがる」
頭の奥が熱くなる。どうにかフライに魚が反応してくれるようになった頃、ロッドを振る腕になにやら礫のようにブツブツと当たるモノがある。気がつくと、それは虻の大群だった。腕といい背中といいまとわりついてくる。こうなったらもう釣りどころではない。退散だ!撤退開始。「水の上にはいないようだよ」との大さんの言葉に、流れの中を必死で逃げる。逃げるあとからライズがあったりして..いったい
この川の魚は・・・?未練を残しながらも虻に追われて走る。

 虻は逃げ込んだ車の中まで追ってきて、もう大騒ぎ。「明かりのあるところに行って追い出せ〜」というK++さんの無線の声で自販機や街路燈を探して車を走らせる。クーラーで活動を鈍らせて叩き潰したり、ルーフを開けて追い出したり、もう散々。やがて、他のポイントに入っていた仲間も虻に追われてやってきて合流、打ち止め。イブニングライズはフライのKaterさんやSOCKEYEさんには3尾づつの良型イワナを、ルアーのK++さんにはチビヤマメをプレゼントしてくれた。

 1994.8.7 長野県白馬村

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