できればこの日のうちにロープウエイで千畳敷カールまで登り、一気に稜線上に躍り出て夕日と翌朝のご来光を仰ぎたいものと中央高速道を急いできたけれど、駒ヶ根に着いてみれば早くもロープウエイは4時間待ち。たった7分で2000メートル級の高地に立つことができるのだから休日の混雑はけだし当然。下から3時間も4時間もかけて正しい登山をする気力も真面目さもない我々夫婦は早々と諦めて天竜川観光。
流れの中にチラホラ見かける鮎釣り師達の姿もなにやら物憂げな雰囲気が漂っていて、所は変われど近年の鮎釣りはどこもかしこも絶不調と、妙な納得をしてその日は山麓の温泉に入ってキャンプで一泊。
駒ヶ根橋の袂にある菅の平キャンプ場。フィッシングネットワークの仲間達とKOLMと称して初めてアウトドアでキャンプ&フィッシングの集いを開催した懐かしい場所、その頃は未だキャンピング装備も乏しくて、工事現場の養生シートで雨露をしのいだっけ。まさにその場所でのオートキャンプ。かって一尾の渓魚にも出逢えなかった黒川の瀬音が枕元に懐かしかった。
翌朝は未だ星が煌めく午前3時半起床。ここまで来て1時間も2時間も列ばされてはたまらない。朝食もそこそこにキャンプサイトを撤収、しらび平行きのバス待ちの列に並んだのが午前5時半。
それから1時間半後には千畳敷カールに降り立ち、黒百合やミヤマキンバイ、チングルマ、イワカガミなど高山植物が咲き乱れる登山道をゆっくりと登る。
鞍部の乗越浄土まで約50分、今回の山歩きで唯一の急坂。見上げれば宝剣岳がその鋭い刃を青空に突き上げている。
手前に白いチングルマや黄色いミヤマキンバイなどを撮り込んだ定番の風景写真を撮って一人でご満悦。
振り返れば千畳敷カールの向こうに広がる雲海の上にうっすらと南アルプスの山並みが連なっている。
乗越浄土から宝剣小屋、中岳までは緩やかな丘の道を約1時間。
花壇状に囲んで保護された高山植物の女王とも呼ばれるコマクサが可憐というよりは痛々しく密やかに咲いている。
中岳(2925m)からは城塞のような宝剣岳、それに連なる空木岳(2864m)を、そして大きく鎮座する木曽駒ヶ岳の全貌を望むことができる。
中岳からは木曽駒を眼前に見ながら鞍部にある頂上山荘までいったん下り、広い尾根道を再び登り詰める。
木曽駒山頂(2958m)には伊那谷側と木曽谷側の二つの社が祀られていて、その中間地点に山頂の標識がある。
山頂からは北アルプスや南アルプスの山々が展望できるはずなのだが、残念ながら雲に霞み御嶽山が時折雲の合間から顔を見せるだけ。
山頂到達は午前10時。この日は山頂小屋に宿泊を予約してあったものの、夕刻まで山頂に停滞するのも退屈だし、下りロープウエイで行列させられるのも興ざめなのでキャンセルして下山。KOLM会場の木曽駒高原キャンプ場を目指す。木曽駒を挟んで登って来た方向とはちょうど反対側、山頂から徒歩で下りても3時間足らず。車での登山もこうなると不便だ、縦走とか横断とかができない。飯田まで南下して妻籠宿経由で4時間かけての大迂回。テントサイトを設営してから近くの駒ノ湯で汗を流して疲れを癒し、他に一組のキャンパーしかいない静かなキャンプ場でゆったりと過ごす。
KOLMとは「渓流オフラインミーティング」の略、
遠くは神戸、大阪そして群馬、千葉、神奈川、東京から懐かしい仲間達がキャンプ場に三々五々集まってきた。
パソコン通信のPC−VAN時代からのフィッシングネットワークの仲間たちだ。
海釣り、川釣り、フライ、鮎釣りとジャンルを問わずに10年近くも交遊を続けてきた仲間たちだ。
子供達の成長振りが嬉しいやら寂しいやら。
今回の食事はBBQ以外は各自が腕によりをかけた絶品料理を持ち寄ってのバイキングスタイル。
あまり色々ありすぎてとうとう食べずじまいだった料理もあったりした。
夕食後は恒例の森の音楽会、フォークギターにエレキギター、マンドリン、キーボード、タンバリン、手揉み拍子付きボーカル(^−^;もあったりして、満天の星の下での賑やかなコンサート。
そして夜遅くまで語らいの輪が広がった。