東京の近郊もようやく秋の気配が漂ってきました。例年だと車から鮎釣りや渓流の道具を降ろし、
海釣りバージョンに切り替えるのですが、今年海釣りに気持ちが向きそうにもないので、
とりあえずはキャンピング&山歩き仕様に変更しました。
「絶滅の危機に曝されながら、
懸命に生きようとするヤマメの生態と、万物の霊長の資格を失った人間の愚かさを詩情豊かに活写」
との帯封のコピーとカバーの山女魚のイラストに惹かれて手にした一冊。
「ヤマメ物語」 二階堂清風 叢文社 1600円 1999年9月29日
北海道の天塩川に生を受けたヤマメと渓流の物語。当歳魚の新子ヤマメが川の中で出会った先輩ヤマメや
海まで降って戻ってきたヤマメ(桜鱒)から様々な体験談を聞きながら成長し、
やがて銀毛ヤマメとなって海に降るまでを描いた童話風?のノンフィクション。
渓流で暮らす知恵を授ける先輩ヤマメの独演会は、そのまま渓流とそこに棲む魚たちについての基礎知識だ。
またサクラマスとなって母川に回帰してきたヤマメの述懐は、そのまま人間たちが行ってきた愚かしい自然破壊への警鐘となっている。
母なる川に艱難辛苦を重ねて回帰するサクラマスの臨場感溢れる体験談は具体性を帯びて真に迫る。
魚から見た釣り人の心持ちにも話が及び、キャッチ&リリース、
キャッチ&イートの問題も魚の側から説明されたりして妙な気分になる。
ある意味では格好の渓流釣り入門書と言える。
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