自分の腕前はさておくにしても今年も荒川の鮎は絶不調。周囲の竿が曲っているのもほとんど見かけない。
流れに立ち込む釣り人の姿もどことなくけだるさが漂っている。昨年も魚影だけは濃かったが一向に追い気を見せてくれなかった。
闘争心を失った鮎ばかりだったようで囮鮎と仲良く遊んでくれただけ。今後の状況回復を願うばかり。
鮎の不振をかこっている折も折り、
おどろおどろしいタイトルの本が出版されたものだ。
「狐憑き」ならぬ「巨鮎憑き」とは。鮎釣りはどうやらエッセイよりも小説のモチーフに馴染むようで、
巨鮎釣り師の人間臭い執念が格好のテーマになるようだ。
「巨鮎に憑かれた男たち」花見正樹 つり人ノベルズ 950円 1999.8.10
鮎釣りの名川とされる「狩野川」「四万十川」「那珂川」をそれぞれ舞台にした鮎に憑かれた男たちの三つの物語り。
「 狩 野 川 慕 情 」
「 魔 の 四 万 十 川 」
「 巨 鮎 に 憑 か れ た 男 た ち 」
いずれの作品もカフカもどきの変身を思い起こさせたりして、鮎の怨念ここに極まれり!というのがちょいと安易ではあるが、
自然破壊やら釣りの商業化、はたまたバイオテクノロジーやらの今日的な問題点も織り込んで物語りは展開する。
「鮎釣りをテーマにしたミステリー小説の傑作」とは帯封のコピー。
巨鮎に憑かれた釣人を描いた作品としては、この本も必読!
「 鮎 師 」 夢 枕 獏 講談社文庫 1992.6.15
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