この三連休をいかが過ごされましたか。
悪天候に出漁の出端をくじかれてしまった方も多いことでしょうね。
軟弱釣師の私は雨の中、近場の渓流を未練がましく車で覗き回った挙句に、とうとう竿を出さずに帰ってきました。
漸く晴天に恵まれた22日、前日に解禁になったばかりの多摩川支流の大丹波川の奥まで車を走らせましたが、
あまりの釣り人の多さに方針を変更して棒ノ嶺(棒ノ折山)に登ってきました。
標高969mの山頂からは広く関東平野を一望、新宿副都心の高層ビル群や遠く筑波山を眺めることができました。
解禁の有難味が日々薄れ行く中、いつになったら竿が出せますやら。
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そんな訳で?次回の解禁日、
鮎解禁の緊張感を楽しもうということでは全くありませんが、この辺で私の文庫ベストテンの一冊「鮎師」
をご紹介しておきましょう。
夢枕 獏 「鮎師」 講談社文庫 1992.6.15
小田原の早川をホームグランドとする鮎釣師としても知られる著者が4年の歳月をかけて完成させた珠玉の一編。
著者によれば「鮎釣りにのめり込んでからの年数の、およそ三分の一ほどの時間を、この物語に費やしたことになる
‥‥中略‥‥水だとか、風だとか、新緑だとか、鮎をつかんだ時に手に残るその匂いだとか、
そういうものの色や匂いや感触が、ほろほろと頭の中や指先や素足によみがえってくる」よい気分なのだと言う。
想像を絶する巨鮎を釣り上げることに命を賭して執念を燃やす鮎師の物語。箱根の芦ノ湖から流れ出す早川を舞台に、
「友釣り」ではなく小田原で言うところの「ちんちん釣り」で60センチオーバーの巨鮎を狙う。「青ライオン」「夕映え」
「闇ガラス」「赤お染め」などと名付けられた鮎の毛鉤を駆使してのドブ釣りはよく知られているが、
「ちんちん釣り」はそこに浮木を付けて釣る小田原特有の釣り方。主人公は「黒水仙」という曰くありげな毛鉤で狙う。
確かに著者の他の作品のおどろおどろしさに較べると、底に流れるものは共通しているが爽やかな香りさえ漂ってくる佳編。
作家にとって「必須条件」とされてきた?「不幸の原体験」が無いと言う氏が作家生活の原体験、
原点と考えているのが上高地の山小屋でのアルバイト生活、そこでの山登りや岩魚釣り、
ワサビ採りなどのアウトドア体験だと言う。小説よりもむしろアウトドアエッセイに期待したい!というのは
私だけの我儘でしょうか?
他には以下の文庫本に「釣りエッセイ」や「短編」が掲載されている。
「悪夢で乾盃」 | 角川文庫 | 1991.4.25 |
「鳥葬の山」 |
文春文庫 | 1993.12.10 |
「釣りにつられて」 |
福武文庫 | 1994.10.5 |
「夢枕 獏」についてはについては
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