安曇野風来亭 道楽日誌 操業日誌 戦国山城散歩 キノコ図鑑 小平漁協書籍部 自己紹介

小平漁協の通勤娯楽

1999.3.3

 人と待ち合わせした新橋駅前のSL広場ではちょうど古本市が行われていて、 ついつい釣り本探しに夢中になってしまいました。其処でたった一冊発見した釣りの本が門谷憲二著「盆の釣り」、 しかも著者のサイン入り。「ん!なもん手放すなあ!」とは思ったものの、BOOK Fishingの醍醐味を久々に味わいました。
 それ故、文庫本ベストテンを一時休止してのご紹介です。


「盆の釣り」 門 谷 憲 二 朔風社 1992.8.10

表題の「盆の釣り」と「盆の川」の二作。  ページをめくるなり、ふり仮名の多さに暫くは煩わしい思いをしたが、 すぐにその濃密な世界に引き込まれてしまった。
 表題作は「物心覚える頃にはもう一竿の趣に目覚め」 「幼けない頭で釣道を放れ」る釣り好きな子供の廻りの大人たちに起きた出来事を、釣り人への様々な警句を散りばめつつ、 やや古めかしい文体で淡々と回顧して綴った佳品。この物語の核心を象徴的、かつ印象的に述べている一文を敢えて紹介。
 「釣り好きは釣り好きなりに釣りから何かを学び取るものでありまして、雲影水光に塗れ黙念と釣りすすむ中、 意のままにならぬ自然の理の奥深さも少しは肌に感じてまいりますから、 所詮、子供の釣り天狗なぞ他愛の無い事になってしまいます。抱き止めようとしたものが形を失ったり、 手に取ろうとした煌が実は遠くにある憧憬の残照であったりする、その玄妙に戸惑いながら子供は 大きくなっていく」
私の釣り本ベストテンに加えたい作品。久々のBIG Fishing !

  「盆の川」は、「源氏山女魚」が棲むというみちのくの渓に釣行し遭難寸前の憂き目に遭った釣り人 二人が迷い込んだ源義経縁りの里から物語が始まる。なにやら横溝正史の八つ墓村のたたりを彷彿とさせるサスペンスが、 講談風の語り口調に乗ってテンポ良く展開する。こちらも釣り小説に新境地を提示。
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