走る釣り宿のビッグホーンは昨年末に磯釣りバージョンに衣替えしたままで、
海まで走ろうという気力が今年も湧いてこない。どうやら一度も海釣りをすることなく、
このまま渓流の解禁日を迎えてしまいそうだ。今月中旬には長野県の河川が解禁になる。
千曲川源流部の渓流が目に浮かぶ。
そろそろキャンピング&渓流釣りバージョンに切り替えだ。
今年はフライフィッシングへの誘惑がさらに強まりそうな予感がする。
「イワナの夏」 湯川 豊 ちくま文庫 520円 1991.5.28
私が選ぶ釣りの文庫本ベストテンの中で唯一のフライフィッシャーの本。
自然や人との出会い、ふれあいが清々しくも濃密な世界の中に描かれている。「イワナの夏」「渓流乞食」「約束の川」など珠玉の短編集。
ここでは川本三郎氏の的確な解説をもって紹介に替えよう。
「釣り人は決して道徳的な環境保護論者ではない。窮屈なエコロジストではない。
彼は自然をだれよりも愛しながら自分もまた自然のなかでは異物であることを知っている。
エピキュリアンであることも知っている。だから彼はイワナを何匹も釣り上げたあとにそれを焚火で焼いておいしく食べる。」
「自分は迷いを持った釣り人でしかない。
どんなに渓流のなかに入り込みイワナを釣っても結局最後はまたもとの日常生活に帰らなければならない。
どんなに自然を愛しても最終的には自分は魚を殺し、魚を食べる側の人間でしかない‥‥‥。
湯川豊はそういう自分をいつも客観的に見ている。エピキュリアンの湯川豊は同時に誰よりもストイックな釣り人である。」 (注)エピキュリアン(epicurean) 快楽主義者/美食家
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