忙しさにかまけてすっかり配信をサボっておりました。少しばかり忙しいだけで電車
の中での僅かな時間の通勤娯楽のゆとりが持てないなんて、私もまだまだでございます。
とかなんとか反省やらお詫びやらしつつも、配信をサボって読者数が減ったためしは無
く、かえって配信後の部数減少が気になる今日この頃です(^−^)
読者の皆さんがどんな釣りを好むのか?データも何も無くて、ただひたすら自分の気
分のおもむくままに釣り本を紹介しているわけですから、読者数が減ろうが気にすべく
も無いのですが、正直なところけっこう気になったりします。
そんな中で読者の皆さんからのレスポンスは励みになります。
最近、読者の方から林房雄の釣り小説のタイトルを知りたいとのお問い合わせがありました。
残念ながら手元には無かったので古書店通いの折々に心がけていたところ、
やっと発見できました。その時の嬉しさは大物を釣り上げた時の喜びに匹敵します。
「釣り人物語 緑の水平線」林 房雄 1500円 1979.6.12 二見書房
小説家であり釣り師である主人公と、その周りを取りまく様々な人間模様を釣りを軸
に描く釣り小説。ワンマン社長と妾、局の重役と歌手、タレント、入り婿の実業家と美
人釣りガイド、そして家族やら釣り宿の主人、船頭などなど、実に様々な個性的な釣師
の人間模様が主人公の周囲で展開する。主人公は林房雄その人に違いない。
「釣師というやつは、見たところ、楽しそうで、のんきそうだが、
実はみんなさびしいんだ。みんな脱走者で脱獄者なんだ」
「仕事から、世間から、家庭から、自分自身から脱出しようとあがきながら、結
局脱出できないことを知って、瞬間の脱獄気分を楽しんでいる囚人なんですよ」
「みんな心の中に、傷をもっている。しかも、その傷が何の傷だか、自分では知
らないんだ」
主人公を取りまく釣師たちの不倫や不義を調べている私立探偵(彼も釣り名人)の名言だ。
探偵に語らせているところが生々しくて面白い。逆に主人公はこうも考える。
「釣は人生のわずらわしさからの脱出だと言われているが、さてどんなものだろう。
釣仲間という新しいグループができあがってしまうと、生ぐさい人間関係が顔を出し、結局、俗世間の延長になって、
孤独の楽しみは消えてしまう。」釣りもフライフィッシングあり、
フナ釣りあり、ニジマスやブラックバスなどの淡水魚、海ではキスやべラなどの小物、
船釣りでのタイやイサキから巨魚のイシナギ、はたまた海外でのターポンやらサメ、
エイ釣りまで、ありとあらゆる釣りが登場する。釣り人への警句やら粋な表現満載の釣り小説。
かなり入手困難な本なので復刻を期待したい一冊。