電車の吊革にぶらさがりながら停車駅が近づくたびに辺りを窺う。窓の外を振り返るか、
腰を浮かせる客がいればしめたもの、足をそっとズラセテ前に寄せる、それが座席確保の知恵。
中野、いやせめて新宿あたりで座れれば最高!
まず新聞を読み終えてから、
残り時間で釣り本の数章に目を通せさえすればもはや悦楽の境地。JR中央線の車内での椅子取りゲーム、
目線がイヤシクなりました。
「岩魚の渓谷」
小 田 淳 叢 文 社 1600円
ここ暫く、小田淳の時代モノの釣り小説を読み漁ってきて、いささか食傷気味なのは否めなかったが、
ようやく現代モノ?にたどり着いた。
「命の鮭」「幻の魚」「山女魚」「岩魚」の四作品。
時代小説とはこれまたガラリと変わった設定。肉親を失って悲愴感ただよう釣り人が、
滅び行こうとしている渓魚にささやかな望みを託し‥・命を賭してこれら渓魚の存続を図ろうとする‥・
というのが概ねの筋建て。サラリーマンもの?時代小説と著者の釣り小説を読み継いできたが、この作品が一押し。
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