私鉄で国分寺まで出てJR中央線に乗り換え東京駅まで、駅から7分で会社。
ドアツードアで約1時
間20分。これを、もう二十年近く続けている。
途中駅の荻窪、ここに昔、釣り好きな作家が住んでい
た。井伏鱒二がその人。今回は井伏鱒二3題。
「荻窪風土記」 井伏鱒二 新潮文庫 1992.10.5 360円
ここ数年人間ドッグとして利用している東京衛生病院に向かう教会通りと呼ばれる一間半足らずの小
路が、
その昔、弁天通りと呼ばれていて、文壇の錚々たる人士が行き来していたことなんぞをこの本によって初めて知った。
その辺の小路から井伏鱒二はもちろん、小林多喜二、林房夫、太宰治といった
文
壇の面々がヒョイッと飛び出してきそうな気がする荻窪が舞台の身辺雑記、本の端々に釣師・鱒二の顔
がのぞいている。
「いまに、大きな不況がやってくる。 不況になれば、釣が流行する。俺は釣りを勉強する」と、
林房夫はのたもうたそうな。そう言えば、バブルの崩壊とともにアウトドア&フィッシングブー
ムになったような。
井伏鱒二はあの饒舌な釣り師・開高健も師事した小説家だが、海釣りはもちろん鮎にも渓流にも手を
染めていて、
決して上手な釣り師ではなかったようだが、昭和30年代のおおらかな?釣りをいくつか
の著作に残している。
「釣師・釣場」 井伏鱒二 新潮文庫 440円
1997.11.25第6刷
三浦三崎の鯛釣り師、外房の漁師、潮来の鮒釣師、甲州のヤマメ、長良川の鮎、
奥日光の鱒など、全
国各地の土地土地の釣り名人に教えを乞う。
「釣りの醍醐味と旅の風情溢れる、
飄逸な味わいの井伏流釣魚記・釣り談義12編」
「川釣り」
井伏鱒二 岩波文庫 410円 1990.9.17
小説なのかエッセイなのか定かでないが「白毛」という作品がある。テグスには生娘の毛が一番だと
固く信じられていた頃、テグスを忘れた釣り人に筆者が無理矢理白毛を奪われたというお話し。爾来、
白毛を結ぶのが癖になったとか。
しかし髪の毛でハリが結べるのだろうか?旧仮名使いで味わいたい?
のであれば岩波新書から同名で
復刊されている。
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