安曇野風来亭 道楽日誌 操業日誌 戦国山城散歩 キノコ図鑑 小平漁協書籍部 自己紹介

小平漁協の通勤娯楽

2000.9.3


「泣けない魚たち」阿部夏丸 ブロンズ新社 1600円 1995.5.25

  愛知県の矢作川の少年と長良川から転校してきた少年との、春から、夏、秋へと川の季節の移ろいの中で育まれた友情物語.。
  川漁師の祖父と二人暮らしだったこうすけが主人公のさとるの小学校に転校してきたのは春。 かたくなで無口なこうすけだったが、たまたま川で出会ったさとるだけには心を開く。
 川の畔の森の中に秘密の隠れ家をつくり、そこを拠点にして川遊びに熱中する二人。こうす けに教えられながらザリガニを釣り、ウグイやフナを捕まえ、時には養魚池の金魚を釣ったりの子供らしいいたずらも。村八分にされた漁師の祖父の話もうち明けられて、二人の友情は益 々強いものとなる。
 夏も過ぎ、担任の先生からサツキマスが矢作川に遡上していることを教えられ、 二人はサツ キマスを釣り上げることに執念を燃やす。しかし、釣れてくるのはウナギやナマズ、ギギ、 ス ッポンばかり。
 ある日一足先に川に着いたさとるは仕掛けが川の中に引きずり込まれているのを発見する。
あわてて川の中に飛び込んださとるの目に大きな魚の影が写った。次の瞬間大量の水を飲んで溺れ、 意識を失って行く中で河童に助けられる幻影を見る。
 さとるが意識を取り戻したのは3日後。 河童と思ったのはこうすけだった。
 さとるが入院している間にこうすけは何も言い残さず長良川の祖父の元 に帰ってしまってい
た。退院の日、寂しく隠れ家を訪れたさとるは生け簀の中に60センチはあるサツキマスを発 見する。 魚を水の中で抱いて大声で泣くさとる。
 そして秋、落ち鮎の季節、さとるのポケットにはこうすけからの葉書が・・
 
 同名の作品の他「かいぼり」「金さんの魚」の三部作。いずれも矢作川を舞台にした川遊び が大好きな少年たちの物語。

野田知佑氏評 : 「しみじみと面白く、懐かしい本だ。日本人は子どものころ、みんなトム・ソーヤだったんだ。」